◆「園藝≠園芸」 生命そのものから感じる「美」
森と水に恵まれ四季の移ろう日本では、身近な植物から様々な恩恵を受け生きています。太古より続く自然への畏怖や感謝の念は信仰の対象となり、様々な文化活動として、現代にまで受け継がれています。
そんな自然を愛でる心を下地とし、江戸時代には植物育成が広く「大衆の趣味」として普及します。当時の趣味人たちは、植物ごとに細かく土や肥料の配合を変え、盆栽として葉一枚から鉢に至るまでを粋にデザインし、朝顔や蘭、牡丹などの品種改良までをも手がけていたといいます。
そんな、植物(そしてその成長過程)の美術的観賞価値を高め、洗練されたものを「園藝(Plants Art)」といい、現在の「園芸(Gardening)」とは違う視点で語られています。
◆非効率の中にこそある価値
この「園藝」は、時代とともに「非効率的だから」と捨て去られてきた、植物との付き合い方・楽しみ方でした。たとえばお花の鉢植えは、一般的に「咲き始め」が一番“売れる”時期。花が咲くにつれて商品価値は下がっていき、花期を終えた株は破棄されてしまいます。売れる時期を逃した植物は「不良在庫」と見なされてしまうからです。
でも実は、そんな植物に適切な「仕立て」を施してあげれば、翌年、翌々年には、若々しい盛りの植物とはまた違った魅力を見せてくれるものなのです。大切なのは植物の性質を理解してやり、時間と手間をかけて育て、各々の植物が一番輝く舞台を用意してやること。そうして成長した植物は、若い植物にはない独特の風格と品のある佇まいを見せてくれるようになるのです。
成長という、時間という価値を新たに加えた植物の魅力。それを充分に際立たせるための「仕立て」の知識と技術こそが、現代に忘れ去られつつある「園藝」に受け継がれているのです。
◆新たな感性や技術を取り入れること
【ことのは】は、園藝の先人たちが培った技術や知識を掘り起こし、農法や科学、バイオテクノロジーなど異なったジャンルの新しい素材や技術と融合させることで、植物の“新しい表現”に挑戦しています。苔玉作りの技法から発展させた「モスペット」や、水耕栽培植物によるインドアグリーン「i・Plants」をはじめ、古典園芸植物の掘り起こしや絶滅危惧植物の再生・普及活動にも取組み、植物への関心が高まるよう活動しています。
生きている植物。だからこそ、成長もするし痛んだり枯れたりするのも当然です。
だからこそ【ことのは園藝研究所】は、メンテナンスやアドバイスのみのご要望にも、喜んで対応いたします。うちの植物たちは、みんな世界にひとつきりの個性豊かなこどもたち。どうか、長く大切に、お付き合いください。